診療支援
治療

減圧症
decompression sickness
中川儀英
(東海大学准教授・救命救急医学)

A.疾患・病態の概要

●減圧症は,環境の圧力変化によって,血液に溶存していたガスが気泡化し,それによって引き起こされる障害のことで,肺胞が破れて動脈内にガスが混入して引き起こされた動脈ガス塞栓症と鑑別が困難なことが多い.減圧症と動脈ガス塞栓症を総称して減圧障害という.

●減圧症はスキューバダイビング,潜水作業などで生じることが多い.急激な環境圧減少によって,血液中に溶存していた,主に窒素が気泡化したために発生する病態と考えられている.この気泡が血管を閉塞するほか,血管や神経を圧迫するなどの物理的な影響を与えることが原因で様々な症状をきたすと考えられている.

●血液と気泡が接するところでは凝固系が活性化されたり,血管作動性物質が放出されたりする.この血液中に溶存していた窒素の気泡化は血流の悪いところや,脂肪組織などで起きやすい.

●ゆっくり浮上しても,気泡は少なからず出現するものと考えられるが大部分は肺の毛細血管でトラップされることになる.

●一度溶け込んだ窒素は短時間ですべては呼出されない.気泡の量が少ない,または大きさが小さければ,急激な閉塞症状を呈することなく,無症状に経過し,窒素はゆっくりと体外へ呼出される.そのため連続してダイビングを行う時には,決められたインターバルを守らなくてはならないし,また飛行機に搭乗する際には最終のダイビングから1昼夜おかなくてはならない.

1減圧症の分類

 いろいろな分類があるが,病態を理解しておくことが重要である(表1).

1Ⅰ型(軽症) 軽い疼痛で発症し10分ほどで軽快するもの,skin bends(皮膚型)といわれ皮膚のしびれ・灼熱感・そう痒感をきたすもの,関節痛を伴うもの(関節筋肉型)がある.関節内では気泡ができやすいともいわれ,疼痛は最も多い症状である.下肢よりも上肢,特に肩関節の訴えが最も多い.皮疹を伴い,まだら状,大理石模様,丘疹状など多

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