A.疾患・病態の概要
●減圧症は,環境の圧力変化によって,血液に溶存していたガスが気泡化し,それによって引き起こされる障害のことで,肺胞が破れて動脈内にガスが混入して引き起こされた動脈ガス塞栓症と鑑別が困難なことが多い.減圧症と動脈ガス塞栓症を総称して減圧障害という.
●減圧症はスキューバダイビング,潜水作業などで生じることが多い.急激な環境圧減少によって,血液中に溶存していた,主に窒素が気泡化したために発生する病態と考えられている.この気泡が血管を閉塞するほか,血管や神経を圧迫するなどの物理的な影響を与えることが原因で様々な症状をきたすと考えられている.
●血液と気泡が接するところでは凝固系が活性化されたり,血管作動性物質が放出されたりする.この血液中に溶存していた窒素の気泡化は血流の悪いところや,脂肪組織などで起きやすい.
●ゆっくり浮上しても,気泡は少なからず出現するものと考えられるが大部分