A.適応,合併症,ピットフォール
1適応
60回/分以下の徐脈で,適切な気道確保,呼吸にもかかわらず自他覚症状(急性意識障害,強い虚血性胸痛の持続,呼吸困難,うっ血性心不全,低血圧,ショック症状)がある(症候性徐脈)場合で,ヒス束以下の高度房室ブロック(Mobitz Ⅱ型2度,または3度)(図1図,2図)などアトロピンが無効な場合,補充調律に緊急で経皮(経胸壁)ペーシング(transcutaneous pacing:TCP)を行う.
2合併症
痛み,不快感,熱傷,組織損傷など.
3ピットフォール
①気道確保,酸素,静脈路確保,モニター(酸素飽和度,心電図,血圧),輸液を行い,問題に的を絞った病歴聴取と身体診察,原因検索とその治療も忘れないようにする.
②準備ができるまでアトロピン硫酸塩薬0.5mg(総投与量3mg)を静脈投与する.また,アドレナリン(ボスミン®薬)(2~10μg/分),ドパミン薬(イノバン®)(2~10μg/分)を持続静脈投与する.これはペーシングが無効時にも用いる.
③本法はあくまでも経静脈ペーシングまでのつなぎである.明らかな伝導障害による心静止を除き,心静止には推奨されないので,ペーシングを試みるためにCPRが中断されることは避ける.重度低体温には用いない.
④ACS(acute coronary syndrome)では伝導障害で悪化することがあるので,重度症候性洞性徐脈,無症候性Mobitz Ⅱ型2度・3度房室ブロック,新たに出現した脚ブロックなどの悪化に備えて電極を貼付しておく(スタンバイペーシング).
B.インフォームドコンセントでの注意点
根治治療ではないこと,痛みや不快感があること,必要に応じて鎮静すること,その結果,気道確保が必要になることもあること,などにも注意して説明する.
C.準備するもの
除細動器,ペーシング用貼付電極.
D.手技の手順
①意識清明の場合