診療支援
治療

静脈路確保(中心静脈を含む)
venous access
岡本 健
(順天堂大学浦安病院教授・救急災害医学)

A.適応,合併症

 輸液・輸血や薬剤投与目的に血管系へのアクセスを確保することは,救急医療の基本的作業である.状況や目的に応じて静脈と穿刺部位を適切に選択する.

1適応

1末梢静脈 手技が容易で大きな合併症が少なく,迅速・安全な静脈路確保のための第一選択である.浸透圧やpHの格差のために疼痛や炎症を生じる輸液・薬剤は投与できない.持続投与可能なブドウ糖濃度は最大10~12%である.穿刺部位として,①前腕,②手背,③下肢の順に皮静脈を選択し,利き腕や関節部は避ける.

2中心静脈 適応は,①末梢静脈路確保が困難な症例,②高カロリー輸液,③血管作動薬や化学療法薬など末梢静脈投与を避けたい薬剤投与,④中心静脈圧測定などである.穿刺部位として,①鎖骨下静脈,②内頸静脈,③大腿静脈,④尺側皮静脈などがある.重症呼吸不全,出血傾向,穿刺部の感染・壊死(熱傷面など)の有無を評価し,合併症リスク(表1)の少ない部位を選択する.

2合併症

 合併症は,カテーテル挿入時と長期留置に伴うものに分類される.

①前者には空気塞栓,動脈穿刺や血管損傷による出血・血腫,胸腔穿刺による気胸・血胸や心タンポナーデ,カテーテルの迷入,不整脈,神経損傷,胸管損傷などがある.

②後者にはカテーテル感染,カテーテル閉塞,輸液の血管外漏出,血栓形成,静脈炎,血管穿孔などがある.

③各々の合併症について発生機序,予防および対処法を十分理解しておく.カテーテル挿入時の合併症を回避するために血管と周囲組織の解剖(図1)やカテーテルセットの特徴を熟知する.また,留置したカテーテルは適切に管理し,発生しうる合併症を予測して早期に対処する.


B.インフォームドコンセントでの注意点

 中心静脈路の確保には救命目的などの緊急時を除きICが必要である.担当医は目的・方法・合併症などの説明を十分に行い同意を得る.また局所麻酔薬に対するアレルギー歴の有無をチ

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