従来は,腹腔内出血や腹水の有無を検査する方法として頻用されたが,経腟超音波が使用されるようになってからは,この目的だけのために行われることは少なくなった.経腟超音波によって確認されたダグラス窩の貯留液体の性状を確認することが診断に有用である場合に限って本検査は施行すべきである.
A.適応
①子宮外妊娠破裂や卵巣出血が疑われる症例
②ダグラス窩に貯留した腹水の性状確認・細胞診
B.準備
①実施前に排尿をすませる.
②体位は内診の際と同じ砕石位とする.内診台に乗せるタイミングや,待っている間の露出を避けるなどの配慮が必要である.
③必要物品:腟鏡(桜井式腟鏡は,両手がフリーとなるので穿刺の際にはこれを用いる).把持鉗子(単鉤鉗子),カテラン針(23G,20G),ディスポ注射器,局所麻酔薬
C.穿刺法
①内診・直腸診にて疼痛の有無,その位置,子宮の位置,腫瘤の有無を確認する.
②経腟超音波を用いて液体貯液状況を確認するとともに,穿刺に支障をきたす付属器などの腫瘤が存在しないことを確認する.
③腟洗浄後,局所を消毒する.
④桜井式腟鏡を挿入し,腟腔を展開する.
⑤子宮腟部を中心に腟内を消毒する.
⑥子宮腟部後唇を把持鉗子にて把持し上方に引き上げ,後腟円蓋部をよく露出展開する.
⑦後腟円蓋部に局所麻酔薬を浸潤させた後,カテラン針にて後腟円蓋中央部を子宮軸に平行に2~3cm刺入する(図1図).
⑧注射器に陰圧をかけ吸引する.
⑨穿刺終了し消毒後,腟錠と止血用のガーゼを挿入する.
⑩外陰部を清拭する.
D.観察
穿刺液が,暗赤色で・凝固せず・濃縮されたものである場合,穿刺が適切に実施されたことを示す.逆に,穿刺液が鮮紅色で・放置すると凝固する場合,血管などを穿刺した可能性がある.
穿刺液の性状と原因疾患の鑑別は表1図に示した.
ただしダグラス窩穿刺で特に考慮する疾患の簡便な鑑別として,以下に留意.
①暗赤褐色:子宮外妊娠破裂