診療支援
治療

関節穿刺
arthrocentesis
田川泰弘
(八尾市立病院・整形外科医長)
濱田雅之
(星ヶ丘厚生年金病院・手術部長)

A.適応,目的,合併症

1適応

 関節炎による関節液の貯留や外傷後に関節内血腫の貯留が疑われる場合に行う.

2目的

①関節液,関節内血腫の排液により,除痛,可動域改善を図る.

②得られた関節液の性状を調べることで診断の鑑別を行う.

③治療目的で関節内に薬剤を投与することもあるが,救急診療では基本的に行わない.

3合併症

①最も重篤な合併症は,関節穿刺後の化膿性関節炎であり,特に,糖尿病,関節リウマチ,透析患者など易感染性宿主では可能性が高くなる.清潔操作を徹底することに加えて,皮疹や傷のある部位からの穿刺は行わないように注意する.

②また,穿刺する関節の解剖を理解し,神経・血管損傷を起こしうる部位からの穿刺は行わないようにする.

③その他,穿刺針による軟骨損傷があり,抵抗を感じた場合は無理に針先を進めてはいけない.


B.インフォームドコンセントでの注意点

①目的,期待できる効果,合併症(特に化膿性関節炎)について十分説明する.

②太い針を使用するため,ある程度疼痛が伴う処置であることも説明しておく.


C.準備するもの

①注射器:腫脹の程度に応じて大きさを決める.膝関節では,20mLや30mLを使用することが多い.

②穿刺針:強い滑膜増生や組織片を含む場合があるため,通常18~20G針を使用する.

③(必要に応じて)局所麻酔薬,滅菌手袋.


D.手技の手順

①十分に触診して刺入点と方向を決定する(一般的には,伸展側で,神経・血管・腱損傷のリスクが低く,関節内へ容易に到達する部位を選択する).股関節など体表から関節構造の触診が困難な関節では,X線透視下に刺入点を決定する.

②刺入点を中心に,関節周囲を十分消毒する.消毒液はポビドンヨード液を使用し,液が乾燥するのを待って穿刺する.患者の年齢,精神状態などにより,穿刺時に安静を保てない可能性がある場合は,刺入部周囲に局所麻酔を行う.

③患者にはできるだけ筋緊張を避けリラック

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