診療支援
治療

創傷処置
treatment of wounds
水島靖明
(大阪府立泉州救命救急センター・副所長)

A.適応,合併症,ピットフォール

1適応

 外力によって皮膚や組織が離断し,欠損する状態を創傷(wound)という.創は皮膚軟部組織の連続性が断たれた開放性損傷を,傷は連続性が保たれた非開放性損傷をさす.すべての創は,一次的に治癒させることが治療の最終目的であり,創傷治療の基本は止血,損傷の修復,感染の防止が原則となる.

2合併症

 不適切な創傷処置は,創の感染,離開を起こすだけでなく,機能障害や美容形態上の問題も引き起こす.また,縫合の稚拙は後に創縁の凸凹,醜い縫合糸瘢痕の原因となる.

3ピットフォール

1合併損傷の見落としによるピットフォール

①創傷が大きくなればなるほど,創の出血や疼痛により,局所のみの所見に目が奪われてしまいがちとなる.全身状態の観察,他部位の損傷の有無などは忘れてはならない.高エネルギーの受傷機転や創傷部以外にも外力が及んでいる可能性がある場合,逆に創傷の程度が激しい場合には,系統だった外傷初期診療JATEC(primary survey,secondary survey,tertiary survey)に則り診察することが重要である.

②また,創部の観察としては,創傷の状態(部位,大きさ,正常,深さ,汚染や異物の有無)を観察するが,創傷部位に応じて,合併損傷の有無などを注意深く確認する.

③顔面の創傷では,顔面神経麻痺の有無,眼球運動障害や視力,視野障害,涙管,耳下腺,顎下腺損傷,歯牙損傷や開口障害の有無を観察する.

④四肢創傷では,骨折,運動神経損傷や筋腱損傷,血管損傷の有無,特に手の損傷では知覚異常や腱損傷がないかなどを注意深く観察する.

2顔面部の創傷のピットフォール

①不用意なデブリドマンは醜い創痕やひきつれを残すことになる.顔面は血流が豊富であり,他の部位に比べ感染や壊死に強い.デブリドマンは最小限にすべきで,自信がないときは行わず,洗浄,止血のみに留め,専門

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