ギプスの語源はドイツ語のGipsで石膏を意味する.従来骨折の外固定に石膏ギプスが用いられたため,ギプス固定法とはギプス素材を用いて骨折部を全周性に覆い固定する手技を指す.現在では石膏素材のものよりも,ガラス繊維やポリエステル繊維の基布にポリウレタン水硬性樹脂を含浸させたギプス固定材料(プラスティックキャスト)が使用されることがほとんどである.副子とはシーネとも呼ばれ,語源はドイツ語のSchieneである.ギプスが骨折部を管状に巻いて固定するのに対し,副子法は板状のものを骨折部にあて,包帯で固定する方法である.特にギプス素材を全周性でなく,半周性に骨折部に当て,包帯で固定する方法をギプス・シーネと呼ぶ.
A.目的と適応
1ギプス法
ギプス固定は骨折に対する基本的治療法である.その目的は骨折の整復位の保持と急性期における骨折部の局所の安静,軟部組織の腫脹や浮腫の軽減,疼痛の除去である.ギプス固定は骨折や脱臼整復後の固定だけでなく,靱帯損傷や軟部組織損傷,内反足や尖足などの変形矯正,さらには観血的整復固定術後の補強としても使用される.
2副子法
通常の副子は強固な固定が必要でなかったり,患部の高度な腫脹が予想される時,あるいは骨折患者の搬送時などの一時的な固定に使用される.ギプス・シーネは通常の副子に比べ患部へのフィッティングがよく有用である.受傷直後の急性期で腫脹が強く全周ギプスが巻けない場合,あるいは観血的整復固定術後の補強として,また若年者の若木骨折のようにギプスのような強固な固定力を必要としない骨折に使用する.
B.合併症,ピットフォール
1ギプス法の合併症
1循環障害
①局所の腫脹によりギプス内の圧が上昇し,相対的なコンパートメント症候群となって末梢の循環障害を生じる.動脈閉塞の徴候はいわゆる5Pといわれ,脈拍消失(pulseless),疼痛(pain),運動麻痺(paralysi