診療支援
治療

四肢骨折牽引法
traction for fracture of extremities
山本啓雅
(大阪市立大学大学院准教授・救急生体管理医学)

 骨折した患肢に持続的な牽引力を作用させて,骨片転位による変形を可及的に整復し,かつその状態を維持することを目的とする.成人の長管骨骨折では術前の待機期間に,小児では骨折の保存的治療に用いられることが多い.牽引療法は安静による腫脹や疼痛の軽減が図られることや,骨片の転位による神経や血管の二次損傷が予防できること,また局所の観察と処置(創傷を伴う場合)が可能であることなどの利点を有する反面,離床や体位変換を困難にするなどの欠点がある.牽引法はフォームラバーなどを皮膚に当て,これを弾性包帯で巻いて固定したのち,皮膚を介して間接的に牽引する介達牽引と,骨にKirschner鋼線(以下,K-wire)や螺子などを刺入して牽引する直達牽引に分かれる.


A.適応,合併症,ピットフォール

1介達牽引

1適応

①介達牽引は絆創膏やテープを使用する方法もあるが,皮膚のかぶれを生じる場合も多く,市販のフォームラバーで

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