診療支援
治療

単純X線撮影
X-ray photography
鍬方安行
(大阪大学大学院准教授・救急医学)

 X線CTやMRIの高速化,およびその画像再構成技術の進歩はめざましく,救急領域の画像診断においても,旧来単純あるいは造影X線撮影によって診断していた病変や損傷のかなりの部分は,新しいモダリティによって診断がなされるようになった.一方で,単純X線撮影は,CTやX線透視に比べれば被曝量が少なく,比較的繰り返し施行しやすい利点があるし,また近年のデジタル化により,ビューワーを用いれば,一度の撮影で軟部から骨組織まで,様々な条件下での観察が可能である.本項では,このような今日的な視点から,救急領域における単純X線撮影の位置づけをとらえて,要点を整理する.


A.頭部,顔面,頸部

 血管造影を除く頭部・顔面の単純X線撮影の診断的価値は,大半が骨折診断であるが,現在ではそのほとんどがCTあるいはMRIにとってかわられている.その中で,CT能力の補完あるいは検査の簡便性・迅速性から,なお優先順位の高い撮影法がいくつか存在する.

1頭部 横断像のみのCT撮影や,比較的スライス幅の厚いCT再構成画像では,頭蓋骨の横骨折線を見逃しやすい.特に中硬膜動脈を横切る横骨折は,急性硬膜外血腫形成を予見する情報であり,この観点から単純X線による頭蓋骨側面写の意義は今なお大きい.

2顔面 眼窩,視束管,副鼻腔,上顎,下顎を含め,単純X線撮影の診断能力は,thin slice CT・再構成画像に及ばず,CTが不可能な場合のスクリーニング法として以外,選択の価値は少ない.

3頸部 頸椎の不安定性をきたすような第2~6頸椎椎体の粗大な頸椎骨折(図1)や脱臼を簡便に発見する方法として,頸椎側面撮影の意義は大きい.一方で,環椎や軸椎歯突起骨折,頸椎椎弓骨折などに関しては,単純X線撮影の検出力はCTにはるかに及ばない.


B.胸部

 胸部には,骨性組織以外にも,心・肺・大血管などvital organが集中しており,それぞれが特徴

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