診療支援
治療

救急医療体制
emergency medical system
有賀 徹
(昭和大学教授・救急医学/昭和大学病院・病院長)

A.わが国の救急医療体制

 救急医療体制は,①需要に対する病院などでの医療提供,②救急隊などによる患者の搬送,③これらを繋ぐ医療情報に与る,おおむね3つの体制からなる.医療の提供と搬送については,昭和50年代から初期救急施設,二次救急施設,三次救急施設の整備がそれぞれ進められ,「上り搬送」を主体とする体制構築が進められた.そして,救急隊が患者を適切に搬送するために,消防本部は管轄地域における病院情報についての収集の仕組みや,利用の方法についてまさに地域ごとに工夫を重ねてきた.

 診療所や病院など医療提供施設については,厚生労働省から都道府県の衛生部門を経て地域医師会や二次医療圏などへと連絡の体系などが確保されている.その一方で,患者の搬送を担う消防本部は基本的に市町村ごとに組織され,それらを総務省消防庁が束ねている.つまり,都道府県には県下の消防本部を束ねる行政部署があったとしても多くが実効性

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