診療支援
治療

救急医療体制
emergency medical system
有賀 徹
(昭和大学教授・救急医学/昭和大学病院・病院長)

A.わが国の救急医療体制

 救急医療体制は,①需要に対する病院などでの医療提供,②救急隊などによる患者の搬送,③これらを繋ぐ医療情報に与る,おおむね3つの体制からなる.医療の提供と搬送については,昭和50年代から初期救急施設,二次救急施設,三次救急施設の整備がそれぞれ進められ,「上り搬送」を主体とする体制構築が進められた.そして,救急隊が患者を適切に搬送するために,消防本部は管轄地域における病院情報についての収集の仕組みや,利用の方法についてまさに地域ごとに工夫を重ねてきた.

 診療所や病院など医療提供施設については,厚生労働省から都道府県の衛生部門を経て地域医師会や二次医療圏などへと連絡の体系などが確保されている.その一方で,患者の搬送を担う消防本部は基本的に市町村ごとに組織され,それらを総務省消防庁が束ねている.つまり,都道府県には県下の消防本部を束ねる行政部署があったとしても多くが実効性を有しておらず,前述の医療情報について全県にわたって収集し,実際に利用できている体制は大阪府や東京都などに限られている.

 このような状況下にあって,救急医療に関する需要と供給の不均衡がこの数年来顕著になり,2009年10月に改正消防法が施行されるに至った.そして消防庁次長と厚生労働省医政局長の連名による通知「傷病者の搬送及び受入の実施に関する基準の策定について」(2009年10月27日)に従って,救急隊の搬送業務と医療機関での患者受け入れとについて,より体系的かつ有機的に協調させることが都道府県,つまり地方政府に課された.ここでは救急医療体制についての直近の変革という観点から,消防法の改正に関連した考察を進めたい.


B.消防法の一部改正―消防と医療の連携

 消防法の一部改正に伴って,都道府県は救急患者の搬送や,患者受け入れのルールなどを話し合う「協議会」を設置することとなった.これは,従来から

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