今日の診療
内科診断学

聴覚障害
野口 佳裕


聴覚障害とは

■定義

 聴覚経路は,外耳,中耳,内耳(蝸牛),内耳神経(蝸牛神経),聴覚伝導路,大脳聴覚野により構成される.

 音は疎密波として外耳道に入力する.この機械的振動は,鼓膜と耳小骨(ツチ骨,キヌタ骨,アブミ骨)を経由して内耳へ伝搬される.内耳では,蝸牛コルチ器内の有毛細胞において機械的振動が電気信号に変換される.蝸牛有毛細胞に分布する蝸牛神経は,大部分が脳幹において蝸牛神経腹側核へ入る.

 その後,同側もしくは反対側の上オリーブ核,外側毛帯を経由し,下丘,内側膝状体へと上行する.内側膝状体からは聴放線を形成し,大脳聴覚野である横側頭回〔Heschl(ヘシュル)回〕にて音が認知される.これらの聴覚経路のどこが障害されても聴覚障害(hearing impairment)が生じる.

 耳鳴は,外部音とは関係なく患者が音として知覚する異常聴覚現象である.耳鳴の多くは聴力低下を伴うが,聴力検査上明らかな異常を示さない無難聴性耳鳴もある.

■患者の訴え方

 聴覚障害が生じたときに最も頻度の高い症状は,難聴と耳鳴である.

 患者は難聴を「聞こえない」「聞こえにくい」「言葉がわからない」などと訴える.乳幼児の場合には,「呼びかけに振り向かない」「テレビの音が大きい」などで両親により気づかれることが多い.

 耳鳴の大部分は,患者のみが感じる自覚的耳鳴である.この場合,「セミが鳴いているような」「キーン」「ザー」などの持続的な音を自覚することが多い.一方,少数ではあるが患者以外の人にも知覚できる他覚的耳鳴があり,「カチカチ」などの断続音や「心拍に一致する」拍動性耳鳴として訴えることがある.なお,耳鳴を感じる部位は「耳の中」が多いが,頭鳴として「頭の中で音がする」こともある.

 そのほか,「耳に水が入ったような」「トンネルの中に入ったときのような」耳が塞がった感じ,あるいは「圧迫された」感じを訴えること

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