今日の診療
内科診断学

鼻出血
鈴木 康弘


鼻出血とは

■定義

 鼻出血(nasal bleeding,epistaxis)とは文字どおり,鼻・鼻腔からの出血を指す.

■患者の訴え方

 患者は,「突然鼻血が出てきた」「なかなか鼻血が止まらない」「毎日のように繰り返し鼻血が出ている」「鼻をかんだら鼻血が出てきた」などと訴える.

 なんら誘因なく鼻出血を認める場合と,なんらかの刺激や病変により鼻出血を認める場合の大きく2つに分けられる.

 鼻出血の原因となる代表的な疾患を図3-110に示す.

■患者が鼻出血を訴える頻度

 施設により差はあるが,耳鼻咽喉科外来患者総数の約2%という報告がある.めまいと並んで,耳鼻咽喉科救急疾患として最も患者数が多い疾患の1つである.疾患頻度は,施設の規模や設備の有無により差異がある.臨床的重要度も,患者の全身状態や出血量により同一病変であっても異なるとは考えられるが,筆者の臨床経験からおおまかに図3-111のようにまとめた.患者にとっては,鼻出血はいかなる原因で生じたとしても重要なものと考えられる.

 図3-111の位置づけは,小児の鼻出血では積極的止血術をあまり行わないことが多いことから,低い重要度とした.循環器系の全身性の場合,抗凝固薬などの内服で止血に難渋したり,再出血の可能性が高いことから,高い重要度とした.

症候から原因疾患へ

■病態の考え方

 患者が鼻出血を訴える場合,まずどちら側からの鼻出血なのかを確認することが大事である.両側性のことは非常に少なく,通常は片側性である.しかし,上咽頭経由で反対側に回った血液が対側から出てくることがあるため,「両方の鼻から出てきた」と訴えることも多く,注意して医療面接を行う必要がある.診察をスムーズに進めるためにも大事な項目の1つと考えている.

 続いて患者の年齢,既往歴を確認する.表3-112aに示すように,年齢層により原因となる疾患に若干の相違がある.また

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