今日の診療
内科診断学

いびき
(音)収載項目
三木 誠


いびきとは

■定義

 いびき(snore)とは,昼夜を問わず,睡眠中に呼吸気が上気道の狭窄部位を通過する際に起きる気流障害に伴い,咽頭や喉頭の構造物あるいは分泌物が振動して生じる,異常な呼吸音のことをいう.多くは吸気時に起きるが,程度がひどくなると呼気時にも聞かれるようになる.さらに進むと心肺疾患が合併する.Lugaresi(ローガレシー)が提唱した重症いびきの程度分類を表3-125に示す.

 いびきの発生においては,睡眠,気流障害,振動する構造物が重要なファクターである.また,いびきをかく母集団のなかに,閉塞性睡眠時無呼吸症候群(obstructive sleep apnea syndrome; OSAS)患者が含まれている.

■患者の訴え方

 睡眠中に生じるため,患者本人が自覚していることは少なく(約23.3%),いびきののちに出現する呼吸停止を家族が心配して来院することが多い.本人の訴えとしては,周囲から指摘された日中の居眠り〔過眠(excessive daytime sleepiness; EDS)〕,注意散漫,作業能率の低下,睡眠障害(睡眠不足,昼間傾眠),頭痛が多い.

■患者がいびきを訴える頻度

 一過性にいびきを生じることもあり,正確な頻度は不明ではある.Laugaresiらの報告では,人口の約19%(男性24.1%,女性13.8%)が習慣的いびきを有し,30歳以降に増加し,60〜65歳では男性60%,女性40%程度に認められる.わが国では,成人男性の20.1%,女性の5.0%に認められたという報告がある.いびきを訴える人のなかに含まれる睡眠時無呼吸症候群(SAS)の頻度に関して,わが国で一般住民910人を対象とした調査では,男性3.3%,女性0.5%と報告されている.

症候から原因疾患へ

■病態の考え方

 REM睡眠中には,呼吸中枢が抑制され,呼吸パターンは不規則で,しか

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