くも状血管腫,手掌紅斑とは
■定義
●くも状血管腫の定義
くも状血管腫〔vascular spider,spider angioma,spider nevus(nevi)〕は中央に拍動する点状の細動脈があり,そこより放射状に血管が伸びて一見“くも”のように見えるため,この名前がある.大きさは直径1〜20mm程度まである.圧迫すると血流が途絶え血管腫は消失するが,圧迫を解除すると再び出現する.
出現部位は上大静脈に注ぐ静脈が分布する皮膚領域であり,特に顔面,頸部,乳頭より上の前胸部,手背,手指,前腕,上腕,肩,肩甲部に出現する.
●手掌紅斑の定義
手掌紅斑(palmar erythema)とは,手掌,特に母指球・小指球および指球に紅潮した斑紋を認める場合をいう.圧迫すると紅斑は消失し,放すと再出現する.
健常者でもときどき手掌が紅潮するが,その部位は全体のことがほとんどで,赤さは明るみを帯びて一様である.手掌紅斑では手掌中央部には紅斑がないか薄く,紅斑部にはむらがあり,ときには斑点状に見える.
■患者の訴え方
●くも状血管腫
患者自身は,“赤い斑点”として気づくことが多いが,くも状血管腫には痛みや痒みはないため,そのものを主訴として受診することは少ない.
●手掌紅斑
「手が赤い」「手が赤くてほてる感じがする」と訴える場合がほとんどである.
■患者が訴える頻度
●くも状血管腫
前頸部,胸部の赤い斑点を主訴として受診することがある(表3-218参照)図.
●手掌紅斑
表3-217図に手掌紅斑をきたす疾患とその出現頻度を示した.肝硬変では全体の50%以上にみられるが,なかでもアルコール性肝硬変の場合には70%以上にみられる.
症候から原因疾患へ
■病態の考え方
(図3-211)図
●くも状血管腫
くも状血管腫をきたす疾患を表3-218図に示す.この病変が最も多く出現するのは肝硬変である.アルコール性肝障害,