今日の診療
内科診断学

排尿障害
船曳 和彦
福井 光峰
富野 康日己


排尿障害とは

■定義

 正常な排尿機能は,膀胱に尿を貯留する蓄尿と,その尿を排泄する尿排出で構成されている.したがって排尿障害(dysuria)は,蓄尿障害と尿排出障害に分けられる.排尿障害の症候として,尿排出障害の程度により,排尿困難,残尿,尿閉などに分けられる.蓄尿障害として尿失禁がある.

 排尿困難とは,スムーズな排尿ができず,排尿に努めても時間を要する状態を指す.尿意を催してから実際に排尿を開始するまで時間がかかるものを遷延性排尿,排尿を始めてもなかなか終わらず,時間がかかるのを苒延性排尿と呼ぶ.

 残尿とは,排尿困難のため膀胱内に貯まった尿を完全に排出できず,尿が膀胱内に残存している状態を指す.

 尿閉とは,残尿が進行し,膀胱内に尿が貯まっているにもかかわらず,排尿ができない状態を指している.尿の生成が少ない乏尿・無尿と混同してはならない.

 一方,尿失禁とは,不適当な時間・場所で尿が不随意に流出する状態である.主なものとして,尿意を感じると排尿を抑制できない切迫性尿失禁,咳・体動などによる腹圧の上昇による腹圧性尿失禁,尿排出障害のため膀胱容量限界まで尿が貯留し膀胱内圧が尿道抵抗より高くなり,尿が漏れる溢流性尿失禁などがある.

■患者の訴え方

 排尿困難では,「トイレに時間がかかる」「尿がなかなか出ない」「尿が細い,だらだらと出る」など,トイレの時間的な要素に関する訴えが多い.

 残尿では,「トイレに行ってもすっきりしない」「トイレに行っても,またすぐに行きたくなる」などと訴える.

 突然発症する急性尿閉では,「尿が貯まって苦しい,冷や汗が出る」「尿が出なくて苦しい,不安である」など,苦悶状態で切迫した訴えとなる.逆に,徐々に進行する慢性尿閉では自覚症状の訴えが乏しいのが特徴である.

 切迫性尿失禁では,「おしっこを我慢できない」,腹圧性尿失禁では,「お腹に力を入れたり,咳やくしゃみを

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