今日の診療
内科診断学

排尿痛
鈴木 祐介
井尾 浩章
富野 康日己


排尿痛とは

■定義

 排尿に関連して起こる痛みを排尿痛(micturition pain)という.排尿と疼痛を感じる時間的関係によって,初期排尿痛(initial pain),終末期排尿痛(terminal pain),全排尿痛(total pain)の3つに大きく分類される.そして,排尿後痛(pain after micturition)があるが,これは残尿感(residual feeling)とも表現される.

■患者の訴え方

 通常,男性では遠位尿道に,女性では尿道に放散する痛みとして訴えることが多い.排尿後疼痛が軽度な場合には,排尿後の下腹部不快感,残尿感などとして表現することが多い.時に疼痛を,「焼け火箸を突っ込むような痛み」として訴える場合もあり,排尿時灼熱痛(burning on urination)とも記載される.

■患者が排尿痛を訴える頻度

 平成25年の厚生統計協会の国民生活基礎調査によれば,排尿困難・排尿痛の有訴者率は人口1,000人あたり男性は12.9,女性で5.5であった.

症候から原因疾患へ

■病態の考え方

(図3-265)

 患者が排尿痛を訴える場合,痛みとその時間的関係が病態を推測するうえで重要である.

 初期排尿痛は,排尿開始当初に強い痛みを感じるもので,前部尿道炎で起こることが普通である.

 終末期排尿痛は,排尿の終末時に増強する疼痛で,膀胱頸部から後部尿道にかけて炎症が存在する場合に認められる.炎症部が収縮するために痛みにつながると考えられ,急性膀胱炎,急性前立腺炎,急性後部尿道炎では,程度の差はあっても必発である.炎症が軽度の場合は痛みではなく,不快感程度のことも多い.

 全排尿痛は,排尿の全経過にわたって有痛性の場合をいう.尿道炎に伴うことが多いが,濃縮尿,塩類尿でも訴えることがある.これらを引き起こす病態は,図3-266に示すように解剖学的位置関係と相関

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