今日の診療
内科診断学

脳血管障害
根本 繁


脳血管障害とは

■定義

 脳血管障害(cerebrovascular disease; CVD)とは,脳血管に病変があり,その結果,脳および脳神経の症状をきたす疾患の総称で,一般的には脳卒中と呼ばれることが多い.

 かつてわが国の死亡原因の第1位であったが,悪性腫瘍,心疾患に次いで第3位になり,最近は肺炎に次いで第4位となっている.死亡数は相対的に減少しているが,患者数は減少していない.要介護5のいわゆる寝たきり状態の半数は脳血管障害であり,わが国の医療において重要な疾患の1つといえる.

 脳血管障害は時間との勝負で,“Time is brain”とも言われ,迅速で適切な診断が患者の予後を左右する.脳血管障害は,出血性疾患,虚血性疾患,その他の疾患に分類できる.出血性疾患ではくも膜下出血と脳出血,虚血性疾患には脳梗塞がある.

■患者の訴え方

 「頭痛」は最も多い訴えの1つであり,「頭が痛い」「頭が重い」「締めつけられるように感じる」「頭がズキズキする」「頭がピリピリする」から,痛む部位は「後頭部が痛い」「左半分が痛い」という訴えまでさまざまで,なかには「片頭痛がする」と自分で診断をつけている場合もある.ほかに「手(足)に力が入らない」「手がしびれる」「ろれつが回らない」「ものが見にくい」「ものが二重に見える」など,神経症状を思わせる訴えもある.「気持ち悪い」「めまいがする」「体がふわーっとする」などといった不定愁訴と紛らわしい訴えも多い.

■患者が脳血管障害を訴える頻度

 くも膜下出血ではほぼ全例が頭痛を訴えるが,脳血管障害の疾患によりそれぞれ訴えは異なる.

症候から原因疾患へ

■病態の考え方

(図3-343)

 くも膜下腔に出血する場合には激しい頭痛,嘔吐を引き起こし,脳圧が亢進すれば意識障害をきたす.脳実質内に出血する場合には,血腫と呼ばれる塊を形成し,局所的に脳組織を破壊するので,出血部位

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