今日の診療
内科診断学

息切れ,めまい,立ちくらみと全身倦怠感
40歳 女性
奈良 信雄


現病歴:3か月前頃から坂道や階段を上るときに息切れがし,めまい,立ちくらみを覚えるようになった.徐々に増悪し,全身倦怠感もあるため受診した.

既往歴:特記すべきことなし.

生活歴:喫煙,飲酒歴なし.最近になって月経は不順で量も増えている.

家族歴:特記すべきことなし.

身体所見:意識は清明.身長163cm,体重47kg,体温36.2℃,脈拍92回/分(整),血圧112/68mmHg,呼吸数12回/分.瞼結膜貧血様,球結膜黄疸なし.頸部リンパ節を触知しない.収縮期心雑音を聴取,呼吸音清明.腹部は平坦・軟で肝・脾の腫大はない.両側下腿に軽度浮腫あり.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

心不全

呼吸不全

腎不全

白血病

頻度の高い疾患

鉄欠乏性貧血

■この時点で何を考えるか?

 医療面接と身体診察を総合して考える点

 坂道や階段昇降などに息切れを慢性的に訴えており,心肺疾患をまずは否定しなくてはならない.〈p〉年齢にしては脈拍数がやや多く,心雑音,下腿浮腫があることから,軽度の心不全はあると考えられる〈除〉呼吸数,呼吸音には異常がなく,呼吸器疾患は考えにくい

 この患者は〈p〉中年の女性であり,息切れのほか,めまい,立ちくらみ,全身倦怠感が慢性的にあることから,最も考えられるのは貧血である.〈p〉実際に瞼結膜は蒼白で,貧血が考えられる.軽度の心不全徴候は,慢性的な貧血に伴うものと考えられる〔症候・病態編「貧血」参照〕.

 貧血自体は,血液検査をすれば簡単に診断できる.〈p〉中年の女性における貧血としては,頻度的に鉄欠乏性貧血が最も疑われる.月経が不順で月経量が増えていることは鉄欠乏性貧血を示唆するが,検査を行えば容易に確定できるだろう.ただし,仮に貧血としても,その原因となりうる病態を医療面接,身体診察で確認しておくことは重要である.〈除〉白血病悪性リンパ腫などの血液疾患を否定するには,

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