今日の診療
内科診断学

突然に発症した運動麻痺を伴う意識障害
88歳 女性
木村 哲也


現病歴:昨日の23時に就寝したときまでは普段どおりで異常はみられなかった.今朝起きてこないため家族が部屋に行ったところ,呼びかけに全く反応がなかったため救急搬送となった.

既往歴:心房細動,脳梗塞,認知症.

生活歴:喫煙歴なし.飲酒歴は機会飲酒.

家族歴:特記すべきことなし.

身体所見:身長152cm,体重48kg,体温36.6℃,脈拍80回/分(不整),血圧180/90mmHg,呼吸数18回/分,SpO2 98%.過剰心音・心雑音は聴取できない.呼吸音清明.腹部所見に異常はない.神経学的には意識レベルはJCS 300(GCS E1V1M3)で,右共同偏視,左上下肢麻痺がある.Babinski反射は左で陽性.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

低血糖

くも膜下出血

硬膜下血腫

頻度の高い疾患

脳梗塞

脳出血

てんかん

■この時点で何を考えるか?

 医療面接と身体診察を総合して考える点

 右共同偏視,左片麻痺で意識障害を呈しているので,右大脳半球の広範囲に異常が起きていることが推測される.〈p〉心房細動があるので,心原性脳塞栓症が考えられやすいが,〈p〉高齢,夜間発症である点からはアテローム血栓性脳梗塞も否定できない.また,〈p〉臨床症状のみからでは出血と梗塞の鑑別は難しい〔症候・病態編「脳血管障害」参照〕.

診断仮説(仮の診断)

心原性脳塞栓症

アテローム血栓性脳梗塞

脳出血

■必要なスクリーニング検査

 意識障害患者の基本的な診断の進め方は,バイタルサインを確認して安定させ,ただちに開始すべき治療があるかどうかを判断することである.次に,病歴を聴取し,内科学的診察,神経学的診察を加え,局所診断,病因診断を行う.AIUEO-TIPS〔症候・病態編「急性中毒」表3-426参照〕は意識障害の鑑別を考えるうえで有用である.本例では低血糖や電解質異常など緊急血液検査に異常はなく,脳血管障害が強

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