診療支援
診断

診断の意義
福井 次矢
(東京医科大学茨城医療センター 病院長/京都大学 名誉教授)

医療における診断の意義

診断は知的分類作業(カテゴリゼーション)

 われわれ医師に課せられた最大の使命は,目の前の患者の命を救い苦痛を取り除くこと(治療)と,予見される病的状態の発現を妨げること(予防)にある.

 そのためには,第一に,患者が現にどのような病的状態にあるのか,またはどのような病的状態に向かいつつあるのかを知る必要がある.そうすることで初めて,病的状態ごとに有効性が証明されている治療方法や予防方法(マネージメント)を選択することができる.つまり,医療における診断とは,どのように患者をマネージメントしたらよいかを知るための病的状態の知的分類作業(カテゴリゼーション)と言い換えることができる.

 診断名ごとに選択されるマネージメントは,病的状態の自然歴を変える(持続期間の短縮化,自覚症状の緩和・軽症化,治癒など)ものでなくてはならない.そうでなければ,診断に必要な面接や身体診察,検査に伴う苦痛やリスク,費用を患者に強いることは倫理にもとることになろう.

evidence-based medicine(EBM)

 下した診断に連動して選択される治療や予防の有効性は,1990年代半ば以降,世界的に新たな医療のパラダイムとなった感のあるevidence-based medicine(EBM)の考え方に則って判断すべきである

‍ そもそも治療ないし予防の有効性は,なんらかの論理・根拠(エビデンス)に基づいて判断されるものではあるが, EBMの考え方では,真実を反映している可能性が最も高いエビデンスに基づいて決めることを基本原理とする.治療のエビデンスには,たとえば,

①ヒトでのデータはないが,病態生理学的メカニズムから考えて有効な可能性が高い.

②何名かの患者で試みたら有効だった.

③観察研究の一種である症例対照研究で有意差があった.

④ランダム化比較試験で有意差をもって有効だった.

など,

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