診療支援
診断

診断の論理
福井 次矢
(東京医科大学茨城医療センター 病院長/京都大学 名誉教授)

診断のプロセス

 一般診療での診断は,以下のようなプロセスで行われることが多い.

診断のプロセス1――患者基本情報

診断のプロセス2――患者観察

診断のプロセス3――医療面接

診断のプロセス4――身体診察

診断のプロセス5――検査の選択と結果の解釈

診断のプロセス6――治療閾値

診断のプロセス7――診療のスパイラル

診断のプロセス1――患者基本情報

 通常,カルテに記載された患者の年齢や性別,住所などの基本情報〔デモグラフィックス(demographics)という〕を知った時点から診断のプロセスが始まる.年齢や性別,出生地,居住地などによって,頻度の明らかに異なる疾患が少なくないからである

診断のプロセス2――患者観察

 次いで,患者に対峙して言葉を交わす前の短い時間,服装,体格,姿勢,歩き方,顔の表情などを観察することによって,可能性のある疾患がさらに絞られる.

 たとえば,うつ病や統合失調症などの精神神経疾患,Parkinson(パーキンソン)症候群,甲状腺機能低下症,Basedow(バセドウ)病,先端巨大症といった疾患は患者の容貌や姿勢,歩き方の観察から思いつくことが多い.

診断のプロセス3――医療面接

 次に,診断のプロセスで最も重要な意義を有する医療面接に移る.このプロセスでは,患者との対話のなかから診断のための情報を引き出すのであるが,同時に,患者-医師関係という特殊な人間関係が樹立され,治療・教育的な効果ももたらされることが期待される

問診・病歴聴取から医療面接へ

 従来,用いられてきた「問診」という言葉には,医師が患者を一方的に問いただして診断に必要な情報を引き出すというニュアンスが感じられ,また,「病歴聴取」という言葉も,医師の関心は専ら病気の診断を下すことにあるように感じられ,上記の患者・医師関係の樹立や治療・教育的効果などの目的・意義が医師と患者の対話に含まれていることが伝わら

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