診療支援
診断

医療情報の有用性
福井 次矢
(東京医科大学茨城医療センター 病院長/京都大学 名誉教授)

病歴情報の有用性

 医療面接で得られた情報が,診断上,どのくらい役に立っているのかについては,病歴情報から医師が考えた疾患名(仮説病名)を書き出しておき,その後,得られる身体所見や検査結果,場合によっては経過観察などによって判明する最終診断名と比較することで評価できる.

 40年以上も前からこのような研究の重要性は提唱されていたが,実際にこのテーマについての研究報告を行ってきたのは2〜3の研究グループのみであった.しかし最近では,世界的に医療の有効性,効率性についての意識が高まるなかで,病歴情報の有用性が再検討されつつある.これまでの研究結果を総合すると,56〜83%の患者では,医療面接後に医師が最も可能性が高いと考えた疾患名が最終診断に一致するとされている.たとえば,胸痛患者について筆者らが行った研究では,医療面接後に最も可能性が高いと考えられた疾患名が,平均7か月後に調べた最終診断名と一致していた割合は71%であった(図1)

 しかも,医療面接後に医師が最も可能性が高いと考えた診断仮説が最終診断と一致する割合は,40年以上も前の結果とほとんど変わっていなかった.したがって,超音波検査やCT,MRI,PETなど新たな診断技術が日常診療で容易に利用できる今日でも,たとえ診断という側面に限っても,医療面接の重要性は変わらないと理解すべきである.

 しかしながら,このような診断仮説と最終診断との一致率が,患者の訴える症状により,かなり異なることに留意すべきである.たとえば,胸痛についての詳細な病歴情報から絞り込まれる診断仮説が最終診断と一致する確率は,全身倦怠感やめまいなどの場合よりも高い.一般的にいって,特定の臓器に由来する可能性の高い症状に比べて,全身的な症状のほうが鑑別診断の的が絞りにくく,診断仮説と最終診断との一致率は低い傾向がある.

 また,病歴情報に基づいた診断仮説が最終

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