診療支援
診断

新しい診断学の考え方
福井 次矢
(東京医科大学茨城医療センター 病院長/京都大学 名誉教授)

病態の理解と臨床疫学の統合

 患者の訴える症候を手がかりとして診断を進めること,つまり,症候を引き起こしている可能性のある疾患(=診断仮説)の数を少なくしていくプロセスでは,2つの異なった考え方が用いられる.1つは病態生理学的な考え方であり,もう1つは臨床疫学的な考え方である.

 前者の考え方により,医学的に可能性のある病態や疾患を多数(症候によっては数十にもなる)想起し,後者の考え方により,想起した病態や疾患を最も可能性の高いものからランクづけすることになる.

病態生理学的な考え方

‍ 病態生理学的な考え方とは,体の構造や機能に関する知識や病気のメカニズムに則って,患者の症候の背後で起こっている病態や疾患を予測することをいう.たとえば,下肢に浮腫を認める患者では,血管内静水圧が高まっているか,血管壁の透過性が亢進しているか,血管内膠質浸透圧が低下しているか,または組織膠質浸透圧が上昇しているかの

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