診療支援
診断

医療面接
奈良 信雄
(日本医学教育評価機構 常勤理事/順天堂大学医学部 客員教授/東京医科歯科大学 名誉教授)

医療面接とは

 病歴とは,疾患を中心にした,個々の患者の歴史というべきものである.すなわち,患者が現在かかえている疾患だけでなく,それに影響を与えていると考えられる背景すべてを指す.その内容は,

① 患者情報

② 主訴

③ 現病歴

④ 既往歴

⑤ 家族歴・社会歴

⑥ システムレビュー

などである.これらを患者に尋ねて病歴情報を確認する医療行為を,医療面接(medical interview)という.

 診療録へは通常この順序で記載するが(表1),(図1),実際には,患者にとって最も関心が大きい主訴および現病歴から質問を開始する.

 家族歴や社会歴などは,むしろ患者とのコミュニケーションがよくとれてから聞いたほうが,より正確で詳しい情報を得られることも多い.

 すなわち,「どうなさいましたか」「いつから,どんなふうに具合が悪いのですか」といったことから,順を追って尋ねていく.

患者とのコミュニケーション

 医療面接を行う際に大切なことは,患者がリラックスして話せるような雰囲気にしておくことである.医師は患者と同じ目線になるように座り,見下すような姿勢をとらないよう気を配る.特に小児や高齢者でも話しやすいように注意をする.

 医師はていねいな言葉づかいをして,患者を気づかう温かみのある態度をとることが大切である.患者が理解できないような難しい医学用語は使わないようにし,患者の話をよく聞き,途中でさえぎらないようにする.矢継ぎ早に質問をしたり,患者が詰問されているという印象を受けるような話し方は絶対にしてはならない.患者の話に耳を傾け(傾聴),うなずいたり,患者の言葉を繰り返したり,話の内容を要約すると,患者に安心感を与え,かつ正確な情報の確認につながる.

 診察室は明るく整頓し,また室温と湿度を適度に保っておく.隣室からの声が聞こえたり,騒音が聞こえるような環境は避ける.

 患者が訴えている症状や,これま

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