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身体診察の進め方と方法
奈良 信雄
(日本医学教育評価機構 常勤理事/順天堂大学医学部 客員教授/東京医科歯科大学 名誉教授)

 医療面接が終われば,ただちに身体の診察に移る.もっとも,患者が診察室に入室してきた時点から,患者の表情,歩行,動作など一挙手一投足に目を配り,観察を始める.また,医療面接で病歴情報を聴取する合間にも,顔貌,表情,精神状態,言語障害の有無などについて注意を払う.

身体診察の進め方

 身体診察(physical examination)は,患者の病態を把握するうえで最も基本的な行為である.全身をくまなく観察し,見落としをしないよう,系統だてて一定の順序で行う.

 通常は,まずバイタルサインと全身状態を観察し,次いで頭頸部から観察を始め,胸部,腹部,四肢,そして神経系の診察へと順次進める(図1).ただし,患者が腹痛などを強く訴えているような場合には,まず問題となっている腹部から診察を開始してもよい.こうした場合でも,見落としがないよう,他の部位の診察を怠らないようにする.

 異常が観察されるという陽性の所見だけでなく,異常が観察されないという陰性の所見にも気を配る.たとえば,強い頭痛を主訴としている患者では,項部硬直の有無が診断に重要な情報を提供する.特徴的な所見がないということ自体が,診断の根拠になることもあるからである.

 身体診察は,主に次の方法を基本とする.

①視診(inspection)

②触診(palpation)

③打診(percussion)

④聴診(auscultation)

⑤神経学的診察(neurological examination)

これらの診察によって確認された他覚的所見あるいは身体所見(physical findings)を現症(present status)という.

 現症の診療録への記載は,診察を通じて得られた所見を正確に,詳細に,しかも要領よく行う(表1)

 その患者を直接には診察していない他の医師が,診療録を読んだだけでも患者の状態をはっきりと思い浮かべられ

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