診療支援
診断

診療録の記載法
奈良 信雄
(日本医学教育評価機構 常勤理事/順天堂大学医学部 客員教授/東京医科歯科大学 名誉教授)

診療録とは

 患者を診察し,処置を行った場合には,必ずその都度,診療録〔medical record または medical chart,[独]カルテ(Karte)〕に記載しておく.電子カルテが普及しているが,記載する内容は紙媒体と基本的には同様である.

 診療録には患者の訴え,診察所見,検査所見,医師としての専門的な判断(診断,鑑別診断を含む),患者および家族への説明,治療計画,看護師など医療スタッフへの指示,治療や処置の内容,経過など,あらゆる医療行為を正確に記載しておかなければならない.

 これらは,他の医師,あるいは他の医療スタッフが見ても理解できるよう,客観的な立場で記載する.さらに,冗長に走らず,要領よくまとめ,簡潔であることも重要である.患者像,あるいは病態が,どの医療スタッフにとっても短時間で把握できなければならないからである.

 診療録の記載法には,必ずしも統一された方式があるわけではない.しかし,客観的で系統的な記載という点から,患者を診察した時点で問題点を挙げ,その解決を目指すPOS〔問題解決志向システム(problem oriented system)〕に基づいたPOMR〔問題解決志向型診療録(problem oriented medical record)〕が一般的である.

 POSでは,①患者のもつ問題点をすべて集め,②それらの問題点を整理して明確化し,③問題解決のための合理的な計画を立て,④その計画を実行し,⑤得られた成果を評価し,フィードバックすることに特徴がある.こうすることにより,系統的な思考が行われ,客観的で科学的な診療が行えることになる.

 POMRは,その思考過程に沿って記載するので,見落としがなく,客観的で論理的な診療が実行できる.

POMRの記載法

 POMRの構成は,大きく5つに分けられる(表1).このうち,初診時には基礎データ,問題リスト

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