寝汗,ほてりとは
定義
寝汗
寝汗とは,睡眠中の発汗のことであり,盗汗ともいわれる.
健常者でも,高温や水分を過剰に摂取したときや,運動で肉体的に疲労したときに,寝汗を生じる.また,肥満者でもしばしばみられる.
ほてり
ほてりやのぼせは,突然に起こる熱感である.部位は上胸部,頸部,顔面,特に頬・頭に多く,手足にも及ぶ.症状の持続は2,3分のことが多く,繰り返し生じ,ほてりと同時にしばしば発汗がみられる.生理的反応として,入浴や運動後などにも生じる.
患者の訴え方
寝汗
「夜中に首すじ,胸,わきの下などにじっとりと汗をかき,目が覚める」と述べることが多い.
ほてり
「突然顔がカーッと熱くなり,汗も出ます」などと述べ,患者自らが「更年期障害でしょうか」と質問することも多い.繰り返し生じるほてりには,発汗や動悸を伴うことが多く,そのほかに,倦怠感,不眠,不安,めまい,過呼吸などを伴うことがあり,日常生活にも支障をきたしたりする.そのような場合には,器質性疾患を除外した結果,更年期障害と診断される場合が多い.
患者が寝汗,ほてりを訴える頻度
寝汗
感染症患者では発熱を伴うことが多く,高頻度で寝汗を訴える.
更年期障害,甲状腺疾患,結核,悪性リンパ腫などでも,しばしば認められる.
ほてり
ほてりは更年期の女性では約80%にみられる.同様に,月経前症候群や更年期前に両側卵巣摘出手術を受けた女性でも高頻度でみられ,更年期の男性では約10%程度にみられる.
症候から原因疾患へ
病態の考え方
寝汗
汗腺は,エクリン汗腺とアポクリン汗腺の2種類に分けられる.
エクリン汗腺はほぼ全身の皮膚に分布し,アポクリン汗腺よりも多い.特に前額部,手掌,足底などに多く分布する.アポクリン汗腺は腋窩,乳輪,外陰部,陰囊などに存在する.発汗の形式は,エクリン汗腺が関与する温熱性発汗と,アポクリン汗腺が関係する精神性発汗の2つに大別され