診療支援
診断

肥満,肥満症
obesity
遠藤 逸朗
(徳島大学大学院生体機能解析学 教授)

肥満,肥満症とは

定義

 『肥満症の診療ガイドライン2022』では,肥満という身体状況の判定と,医学的観点から減量治療を必要とする肥満症を疾患として診断することとを明確に区別している.

●肥満の定義:脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態で,体格指数〔BMI=体重(kg)/身長(m)2〕≧25のもの.

●肥満症の定義:肥満症とは肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するか,その合併が予測される場合で,医学的に減量が必要な病態をいい,疾患単位として取り扱う.

 肥満,肥満症は原発性と他の疾患などによる二次性に分類される.原発性肥満は不規則な生活習慣を背景に,相対的な栄養過多により発症するものである.一方,二次性肥満は原疾患の治療により肥満が解消されることがあるため,注意が必要である.

患者の訴え方

 患者は美容上の問題から「太い」「お腹まわりの脂肪が増えた」と訴えることが多い.そのほかに,「息が切れる」「汗をかきやすい」「よく眠れない」「倦怠感がある」と訴えることもある.

患者が肥満を訴える頻度

 肥満を主訴として来院する患者の詳細な頻度は明らかではないが,その大部分(90〜95%)は,食生活や身体活動の低下に伴う原発性肥満(単純性肥満)である.ほかの疾患や薬物などによる肥満(二次性肥満)の頻度は少ない.

症候から原因疾患へ

病態の考え方

(図1)

 患者が肥満を訴える場合,実際に肥満か否かを後述する方法で確定したのち,患者の食生活,家族歴,肥満歴,運動量などを医療面接で確認し,過食あるいは体質によるものか,視床下部性,内分泌性,代謝性,遺伝性などによるものかをまず考える.

 肥満の本態である脂肪組織の過剰蓄積は,個体において摂取エネルギーが消費エネルギーを超過した結果を示している.すなわち,エネルギーバランスを支配する食欲,ホルモン分泌,自律神経系などの異常が複雑に関連し合って肥満が形成される.その原因

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