診療支援
診断

不眠
insomnia
西川 徹
(昭和大学・京都府立医科大学 客員教授/東京医科歯科大学 名誉教授)
甫母 瑞枝
(スリープクリニック三鷹 院長)

不眠とは

定義

 不眠とは,入眠困難や睡眠維持の困難,睡眠の質の低下を認め,それに伴って疲労感,注意・集中力の低下など,日中の機能障害を認める自覚症状である.

 具体的な不眠症状としては,入眠障害,中途覚醒,早朝覚醒,熟眠感の欠如の4つに大きく分けられる.睡眠時間,睡眠スタイルには個人差があり,たとえば6時間以下の睡眠ですむ短時間睡眠者もいる.睡眠時間だけからでは睡眠障害と診断することはない.

患者の訴え方

 患者は「寝つきにくい」「夜中に目が覚めて,それから眠れない」「寝た感じがしない」「寝床に入るとかえって目がさえてしまう」などと訴える.ほかに「トイレに何度も起きてしまう」「足がむずむずして眠れない」など,身体症状があるために不眠があると訴えることもある.

 一方,「昼間,眠気が強い」「すぐにうとうとしてしまう」と過眠を訴える人のなかには,夜間睡眠の不足を認める場合が多い.

患者が不眠を訴える頻度

 慢性の不眠症状を訴える人は,日本人のおよそ20%にみられる.国際的な診断基準を満たす不眠症の有病率は,およそ6%とされる.不眠は60歳以上の高齢者に多くみられ,高齢者の3人に1人が睡眠に問題をもち,20人に1人が睡眠薬を服用している.

 一方,24時間社会といわれる夜型生活への変化によって,睡眠リズムが障害される青少年の不眠が増えている.

症候から原因疾患へ

病態の考え方

 不眠の原因は5つのPと表現されるように,心理的要因(psychological),精神疾患(psychiatric),生理学的要因(physiological),薬理学的要因(pharmacological),身体的要因(physical)に大別される.しかし複数の原因が重なっている場合も少なくない.その反面,不眠の原因となりうる要因を有していても,すべての人が不眠症を発現するわけではない.

 不眠の原因を図1に示す.まず明ら

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