出血傾向とは
定義
出血傾向とは,止血機構になんらかの異常があり,止血しにくい状態をいう.手術後や月経に伴って出血量が通常よりも多いとか,血尿や消化管出血など健康状態では出血すべきではない部位に出血がみられたり,たいした物理的刺激が加えられてないのに紫斑を生じたりする.
患者の訴え方
患者は,「赤(青)アザができた」「鼻血が出て止まらない」「歯を磨いたときにダラダラと血が出る」「生理の量が最近多い」などと訴える.抜歯後の止血困難や,小手術後の出血で紹介されて来院することもある.
患者が出血傾向を訴える頻度
出血傾向だけを主訴とする患者の頻度は多くない.しかし,出血傾向のうちでも重症な播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation; DIC)は感染症や悪性腫瘍などの基礎疾患に続発するので頻度は高く,1年間に3万人以上で発生していると推計されている.
特発性血小板減少性紫斑病は1年間に約3,000人が発病し,有病率は人口10万に対して約12人である.血友病Aは男子出生人口10万に対して5〜10人で,血友病Bはその約1/5程度である.
症候から原因疾患へ
病態の考え方
(図1)図
出血傾向の患者をみる場合,止血機構のいずれかに異常があるので,止血機構を念頭においておく.
すなわち,血管が破綻して出血が起こると,まず血管が収縮して血流を抑え,破綻した血管部位に血小板が粘着し凝集して傷を塞ぐように血栓(一次止血栓)をつくる(一次止血).次いで血液凝固因子が働いてフィブリンを形成し,強固な二次止血栓をつくる.これで傷が塞がり,完全に止血する(二次止血).
止血が完了したあとは,線維素溶解現象(線溶)によって血栓が溶かされ,元の状態に復する.
出血傾向は,止血機構にかかわる血小板,血管,凝固系,線溶系のいずれかの異常が原因になって起こる.それぞれの代表