貧血とは
定義
末梢血液単位容積あたりの赤血球数(RBC),ヘモグロビン(Hb)濃度あるいはヘマトクリット(Ht)値が低下した状態を貧血という.一般には成人男性でHbが13g/dL未満,成人女性で12g/dL未満,高齢者および妊婦では11g/dL未満を貧血とする〔WHOより〕.
患者の訴え方
貧血患者では,Hbの低下による低酸素血症に基づく症候,貧血が高度になって心不全を起こすことによる症候,そして貧血を起こした原疾患そのものによる症候を訴える.また,貧血の定義が検査値によるので,自覚症状がなく,健診などで貧血を指摘されて来院することもある.
低酸素血症による症候
末梢血液中のHb濃度が減少する結果として末梢組織で低酸素血症をきたし,易疲労感,めまい,皮膚・粘膜の蒼白などの症候が現れる.「仕事の能率が上がらない」「なんとなく気力がない」などと訴えることがある.
心不全による症候
長期間にわたって貧血が続くと慢性心不全を引き起こし,そのために労作時の動悸,息切れ,浮腫が現れるようになる.
貧血をきたした原疾患による症候
鉄欠乏性貧血では口角炎,舌乳頭萎縮,嚥下障害〔Plummer-Vinson(プランマー・ヴィンソン)症候群〕,スプーン状爪(匙状爪)などが認められる.溶血性貧血では黄疸,悪性貧血では舌の発赤と乳頭萎縮〔Hunter(ハンター)舌炎〕,消化器症状,深部感覚障害などを訴える.
患者が貧血を訴える頻度
貧血を主訴として訴える頻度は,入院患者の約0.3%,外来患者の約3.8%である.しかし,実際に貧血のある患者数はもっと多く,貧血のなかでも頻度の高い鉄欠乏性貧血は全女性の約8.5%,潜在的な鉄欠乏は女性の約1/3にもあるといわれる.
症候から原因疾患へ
病態の考え方
(図1)図
貧血は,赤血球の産生低下,破壊の亢進,出血による喪失,そして体内での分布異常によって発生する(表1)図.Hb