眼球突出とは
定義
眼球の前方への異常な突出を眼球突出という.日本人の眼球突出平均値は13mmなので,15mmを超えると眼球突出といえる.Basedow(バセドウ)病〔Graves(グレーブス)病〕の際の悪性眼球突出症では,左右いずれか17mm以上または左右差2mm以上の眼球突出をいう.
患者の訴え方
「目が出てきた」「目つきが変わったと言われた」などと訴えることが多い.両眼の場合も片眼の場合もあり,複視を伴うこともある.眼瞼浮腫を伴うことも多く,「瞼が腫れた」と訴えることも少なくない.炎症を伴う例では,疼痛を訴えることが多い.視野狭窄を伴う例では,「物にぶつかることが多くなった」と訴えることもある.視神経圧迫をきたした例では,視力低下を訴える.内頸動脈海綿静脈洞瘻では,突出した眼球の拍動や頭内の血管雑音を自覚する.
患者が眼球突出を訴える頻度
両眼性眼球突出の90%をBasedow病が占めるといわれている.片眼性の眼球突出でも,その50%はBasedow病である.わが国では,Basedow病全患者の約30%程度が眼球突出を訴えるとされるが,欧米では70〜90%のBasedow病患者に眼球突出を認めるとされている.
眼科ないし耳鼻科疾患による眼球突出の頻度は,Basedow病による眼球突出の頻度に比べて低いが,片眼性の眼球突出ではその頻度が高くなる.
症候から原因疾患へ
病態の考え方
(図1)図
強度近視のように眼球自体が大きくなるものや,眼球の大きさは変わらないが,眼窩容積が小さいために起こる突出,眼窩内や眼窩周辺からの炎症や腫瘍による圧迫が原因の眼球突出などがある.また,眼瞼後退による見かけ上の眼球突出もある.
なかでも眼窩内およびその周囲からの圧迫による眼球突出の頻度が高い.Basedow病眼症,眼科的あるいは耳鼻科的炎症や腫瘍,眼窩に関連する血管病変などによる眼球の物理的な圧迫