診療支援
診断

瞳孔異常
dyscoria
土谷 治久
(佐田診療所 所長)
山下 一也
(島根県立大学 学長)

瞳孔異常とは

定義

 瞳孔異常は,左右瞳孔径の不同を示すが,単に左右瞳孔を見比べただけで検出できるもの〔瞳孔不同(anisocoria)〕と,特別な検査や手技で検出できる瞳孔異常〔Marcus Gunn(マーカス ガン)瞳孔,求心性瞳孔異常(afferent pupillary defect),対光近見反応解離(light-near dissociation)〕がある.

患者の訴え方

 瞳孔の機能は,網膜に入ってくる光量調節とピント調節であるため,「像がぼやけてよく見えない」「光をまぶしく,あるいは暗く感じる」などを訴える.しかし,瞳孔異常による自覚症状は軽いことが多く,他の合併している神経症候,たとえば動眼神経麻痺,Horner(ホルネル)症候群の症状を訴えることも多い.

患者が瞳孔異常を訴える頻度

 瞳孔異常のなかで,散瞳をきたす場合は動眼神経麻痺の頻度が最も高く,縮瞳をきたす場合はHorner症候群の頻度が高い.また,動眼神経麻痺の20〜30%は動脈瘤により生じるとされる.

症候から原因疾患へ

病態の考え方

(図1)

瞳孔反応

 瞳孔異常を理解するためには,正常な瞳孔反応を理解しておく必要がある.

①対光反射

 対光反射の求心路は,網膜神経節細胞(錐体と杆体)が受容器で,ここで受けた刺激が網膜内シナプスを介して神経節細胞からの軸索に伝達される.視神経,視交叉,視索の途中まで視覚伝導路と同一の経路を進むが,外側膝状体に達する前に視覚線維と分かれて上丘腕に入り,視蓋前野に達する.

 ここでシナプスを形成してニューロンを変え(介在ニューロン),同側は中脳水道の周囲を通って同側のEdinger-Westphal(エディンガー・ウェストファル)核(E-W核)に入るが,対側は後交連付近で交叉して対側のE-W核に達する.

 E-W核からの遠心路は,動眼神経の一部として,大脳脚内側溝で脳幹を離れ,海綿静脈洞を通

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?