眼球運動障害とは
定義
眼球運動は外眼筋で行われ,その神経支配は,大脳から脳幹・小脳までのさまざまな部位が関与している.眼球運動障害は,それらのどの部位の障害でも出現し,眼球の動きの異常と眼球位置の異常がみられる.
患者の訴え方
患者は,両眼視機能の障害がみられるため,「物が二重に見える」と複視を訴えることが多い.ただ,核上性の眼球運動障害では複視は訴えない.
その他,物を見るときに像の位置が実際とずれるため「物をうまくつかむことができない」と訴えたり,複視の結果として「頭がくらくらする」と訴える.
また,複視を避けるため麻痺筋を使わないですむように眼性斜頸を認めることがある.
患者が眼球運動障害を訴える頻度
急性に出現する眼球運動障害をきたす疾患で最も頻度が高いのは脳血管障害である.それ以外には,脳幹脳炎,多発性硬化症などを考える必要がある.徐々に出現するものとしては,重症筋無力症,ミオパチー,甲状腺疾患などを鑑別する.
症候から原因疾患へ
病態の考え方
(図1)図
眼球運動の目的は,網膜の中心窩に視線を安定させることと,側方にある視標に眼を運ぶことにある.
人間は,2つの眼で物を見ていながら,1つの物と認識する両眼視機能で物をとらえている.したがって眼球運動の障害では,この両眼視ができないことが病態の中心となる.
眼球運動の障害を理解するためには,正常の眼球運動を理解する必要がある.
正常眼球運動
①片眼での眼球運動
片眼の眼球運動は,4つの直筋と2つの斜筋の計6つの外眼筋の共同運動により行われる.この運動を“ひき運動”と呼び,内転,外転,上転,下転,内旋,外旋などの運動がある.
眼球運動とその障害を理解するためには,その6つの外眼筋の作用を理解する必要がある(図2)図,(図3)図,(表1)図.眼球の水平運動は,内転は内直筋,外転は外直筋が行っており理解が容易であるが,上下運動は,それ