顔面痛とは
定義
顔面痛とは,顔面に生じる痛みの総称である.神経痛様の痛みが多い.
患者の訴え方
患者は「突然刺すような鋭い痛みが走る」「電気が走るような痛み」「焼けるような痛み」と訴えることが多いが,「目の奥付近の激しい痛み」「強い鈍痛が続く」「漠然とした鈍痛が続く」と訴えることもあり,原因によって異なる.三叉神経痛では話をしたり,冷たいものを食べたり,ものを噛んだり,顔の一部に触ると「痛みが走る」と訴えることが多い.
患者が顔面痛を訴える頻度
専門科によってその頻度は大きく異なる.すなわち,歯科口腔外科や耳鼻科では顔面痛の頻度は内科に比べて高い.内科で多い特発性三叉神経痛(tic douloureux)に限ってみると,Rochesterの疫学調査による年齢・性調整後の年間発症率は人口10万人に対して4.7人であり,女性で5.9人と男性の3.4人に比べ有意に高率で,男女とも50歳以後に有意に増加する.
症候から原因疾患へ
病態の考え方
(図1)図
患者が顔面痛を訴える場合,それが特発性三叉神経痛や群発頭痛などの機能性のものか,炎症や腫瘍による症候性のものかをまず考える必要がある.特発性というのは,原因が不明なものである.その多くは機能性と推測されるが,一部に器質性の原因が隠れている可能性もあり,十分な除外診断が必要である.しびれの有無は重要である.
顔面痛をきたす主な原因疾患を表1図に示す.
病態・原因疾患の割合
(図2)図
特発性あるいは症候性三叉神経痛は,内科で頻度が高い.耳鼻科など他科においては当然原因疾患の頻度が大幅に異なり,顔面痛全体における原因疾患の割合は不明である.特発性が最も多いが,症候性では帯状疱疹(後)によるものが比較的多い.また,特発性とされているもののなかに,動脈硬化性血管蛇行による神経圧迫が原因のものもかなりあると推測されている.