舌の異常とは
定義
舌の異常とは舌にみられる炎症,びらん・潰瘍,血管性変化,色素沈着,乾燥,肥大,舌苔,運動障害,味覚障害などを指す.
患者の訴え方
「舌がピリピリする」「舌が焼けるように痛い」「味がしない」「味が変わった」など,訴え方は多彩である.舌の疼痛,灼熱感,不快感,味覚異常が多い.疼痛は嚥下困難を伴うこともある.また,舌は自身で視認することができる部位にあるので,患者の心配の種となり,舌癌恐怖症となる場合もある.
患者が舌の異常を訴える頻度
舌の異常を主訴にして内科を受診する患者は少ない.しかし,医療面接を行うときに舌の異常の有無を聴取すれば,統計的な確証はないが,かなりの頻度になると思われる.
症候から原因疾患へ
病態の考え方
(図1)図
正常の舌粘膜は重層扁平上皮で覆われ,上皮突起と舌乳頭の発達が特徴的である.舌乳頭は,舌背の前2/3には多数の糸状乳頭が,舌縁と舌の先端には赤い点状の茸状乳頭が糸状乳頭と混在して分布している.舌の萎縮性変化など舌表層の変化の主体は,糸状乳頭の変化である.
また舌の神経支配は,顔面神経が舌前2/3の味覚,舌咽神経が舌の後1/3の味覚,舌下神経が舌筋を支配している.
以下に,主に全身性疾患と関連する舌の異常の病態を述べる(表1)図.
舌苔
糸状乳頭に由来する剝離上皮,食物残渣,唾液,細菌,白血球などにより形成される.舌が乾燥し,舌の運動が少なくなれば,乳頭上皮が増殖して舌苔が厚くなる.しかし,舌乳頭が萎縮して粘膜上皮が菲薄化すれば,乾燥していても舌苔はできにくい.舌苔の色調は,摂食物,喫煙,繁殖する微生物などによって異なる.
なお,悪性貧血,Sjögren症候群,赤色平滑舌などで,舌乳頭の萎縮のある場合は舌苔がみられないが,舌苔よりも萎縮性変化のほうが病的意義のある場合が多い.
舌乳頭の萎縮性変化
舌乳頭の萎縮により舌苔を伴わず,舌の表面が平滑にな