診療支援
診断

嗄声
hoarseness
立石 一成
(信州大学医学部内科学第一教室 講師)
花岡 正幸
(信州大学医学部附属病院 病院長/信州大学医学部内科学第一教室 教授)

嗄声とは

定義

 嗄声(かれ声)は音声障害のうちの1つで,声質の変化を表す際に使用される.音声の質のなかで,特に音色の異常のために,聴く人の意識に「嗄れている」「しわがれている」という聴覚印象を起こす性質を有する声を指す.声帯やその周囲の異常によって発声時の声の質が異常になることをいい,失声(無声,ささやき声),気息声(息漏れのある声),粗糙声(だみ声),無力声(力のない声),努力声(力み声)なども含めて嗄声ということが多い.

患者の訴え方

 患者は,「声がかすれる」「声が出ない」「声がふるえる」「ガラガラ声になった」「高い声が出る」などと訴える.ときに人から声の変化を指摘されたことが受診のきっかけとなることがある.反回神経麻痺の患者は「話をしていると疲れやすい」と言うことがある.

患者が嗄声を訴える頻度

 内科外来における嗄声の頻度を示した報告はない.音声障害の頻度としては米国で人口の1/3が過去に経験したことがあると報告されている.わが国の疫学研究では,教師における音声障害の自覚頻度は54~83%と報告されている.上気道炎や感冒様症状の1つとして嗄声を訴える患者もいるため,音声障害の症状を実際に経験する数は多数にのぼると考えられる.

症候から原因疾患へ

病態の考え方

(図1)

 嗄声の発生機序の分類には,音声障害の分類として器質性音声障害と機能性音声障害がある.運動障害を含めたなんらかの器質的異常を認めれば器質性音声障害とし,器質的異常がなければ機能性音声障害と診断する.

 器質性音声障害はさらに以下のように分けることができる.

①両側声帯がうまく合わない(運動障害,両側性または片側性の反回神経麻痺など).

②両側声帯間に異物が挟まる(喉頭異物,声帯ポリープ,結痂性炎症など).

③声帯の質的変化(急性・慢性喉頭炎,喉頭腫瘍,声帯の萎縮,声帯の緊張低下など).

 これらを引き起こす直接の原因には,喉

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