診療支援
診断

口渇
thirst
近藤 剛史
(徳島赤十字病院内科 副部長)
遠藤 逸朗
(徳島大学大学院生体機能解析学 教授)

口渇とは

定義

 “真の口渇”とは,血漿浸透圧(Posm)の上昇や循環血液量の減少により,視床下部の口渇中枢が刺激されることによって生じる水または飲料摂取に対する欲求であり,体液恒常性の維持に重要な生理的症候である.

 一方,口腔粘膜の乾燥や唾液分泌の低下によっても同様の訴えを生じることがある(口腔内乾燥感).

患者の訴え方

 真の口渇感の場合,患者は「喉が渇く」などと訴える.一方,口腔内乾燥感による場合は「口が渇く」などと訴えることが多い.

患者が口渇を訴える頻度

 正確な頻度は不明であるが,脱水(特に水欠乏症あるいは高張性脱水),糖尿病など日常診療で多く経験する疾患において,しばしばみられる症候であるため,その頻度はきわめて高い.

症候から原因疾患へ

病態の考え方

 患者が口渇を訴える場合,それが口渇中枢を介して生じた真の口渇なのか,口腔内乾燥感としての訴えなのかをまず考える.

 真の口渇の場合,水分摂取の不足,体液の喪失,血管外への体液移動などにより,循環血液量の減少やPosmの上昇をきたした結果,口渇を生じたものと,口渇中枢そのものの機能性・器質性異常によるものとがある.

 一方,口腔内乾燥感は,口腔粘膜の乾燥によるものと,唾液腺からの唾液分泌の低下によるものがある.

 これらを引き起こす病態としては図1に示すようなものがあり,その原因疾患として主なものを表1に示す.

病態・原因疾患の割合

 真の口渇が主訴である場合,その原因疾患の多くを糖尿病が占めている.

 一方,日常診療においては食欲不振,発熱,発汗,嘔吐,下痢,出血など,脱水によって循環血液量の減少やPosmの上昇を生じる病態がきわめて多い.このような場合では,原疾患に基づく症状のほかに口渇を訴えることが多い.

 うっ血性心不全,ネフローゼ症候群,肝硬変などでは,浮腫,胸水貯留,腹水貯留など,血管外への水分・体液移動により有効循環血液量が

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