吐血とは
定義
吐血とは,肉眼的に確認しうる中等量から大量の血液成分の嘔吐をいう.通常はTreitz(トライツ)靱帯の口側の消化管(食道,胃または十二指腸)に出血源が存在する.ただし,Treitz靱帯より肛門側の消化管に出血源があった場合でも,出血源より肛門側に狭窄・閉塞などの通過障害があれば吐血を起こしうる(図1)図.
吐血の性状は,出血の部位,持続時間により変化する.
一般に,胃を含む肛門側での出血は,ヘモグロビン(Hb)が胃酸の還元作用によりヘマチンに変化し,“コーヒー残渣様”(melanemesis)と表現される暗赤色から黒褐色になる.この色調変化は,出血量,胃内停滞時間に影響を受ける.胃潰瘍など,胃・十二指腸からの出血は,通常,コーヒー残渣様であるが,急性大量出血の場合は,鮮血となる.
一方,食道静脈瘤など,胃より口側での出血では,鮮血となることが多いが,いったん胃内に停留すればコ