喀血,血痰とは
定義
一般に喀血とは,下気道(肺または気管・気管支)から出血した血液そのものを喀出することをいう.特に100~600mL/日の喀血量を認める場合を大量喀血と呼ぶ.血痰とは,痰に血液が付着もしくは混在したものを指す.口腔や鼻腔からの出血とは区別する.
患者の訴え方
喀血・血痰は身体の危機,生命の不安感を感じるものであり,初めて血痰が出た場合,患者は驚いて外来受診することが多い.訴えとしては「痰に赤い点や線が混じった」「咳をして血を吐いた」「血が混じった痰を吐いた」というものなど多彩である.一般的には「咳とともに出た」と表現するため,吐血と区別できることが多い.しかし,鼻出血や咽頭,口腔からの出血も気道内に吸引され咳嗽を伴い「喀血・血痰」と表現することもあるので注意が必要である.
患者が喀血,血痰を訴える頻度
喀血・血痰を主訴として来院する患者は数%程度とみられ,数十年前と比較し減少傾向である.要因として,生活環境の向上による気道感染,結核の減少,早期発見につながる健康診断の普及などが考えられる.
症候から原因疾患へ
病態の考え方
まず喀血・血痰と鼻,咽頭からの出血,上部消化管からの出血(吐血)を区別する.吐血と喀血の鑑別を表1図に示す.
喀血・血痰は呼吸器疾患のほかに,心血管系疾患(心不全,肺血栓塞栓症など)や出血傾向(血液疾患,薬物性)なども原因となる(図1)図.それぞれ具体的な疾患について表2図に示す.
気管支拡張症は,気管支がなんらかの原因によって不可逆性の拡張をきたした状態である.慢性炎症化に伴い異常血管が発達し,大量喀血をきたすことがある.また,慢性気道感染によっても異常血管が発達し,喀血・血痰の原因となる.突然の喀血と胸部画像上すりガラス陰影を呈する場合,びまん性肺胞出血が鑑別となる.特に血管炎症候群では貧血や抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophi