動悸,脈拍異常とは
定義
動悸とは,通常は自覚しない心臓の拍動を不快と感じる自覚所見であり,心悸亢進とほぼ同義語で用いられる.多くは強い拍動や不規則な拍動,速い拍動として自覚される.脈拍が正常であっても体調や感受性の違いにより,心拍を不快と感じれば動悸である.
脈拍異常とは検脈や心電図検査などにより他覚的に指摘される脈の異常を指す.
患者の訴え方
患者は「心臓がドキンとする」「ドキドキする」「心臓が一瞬止まる(つまずく)ようになる」「脈が抜ける」「脈が速くなる」などと訴える.頻脈が長く続く場合には,「息苦しい」「胸苦しい」と訴える場合もあり,狭心症症状や心不全症状と紛らわしい場合もある.
患者が動悸,脈拍異常を訴える頻度
動悸は外来患者で多く認められる症状の1つであり,プライマリケアにおける患者の主訴の約16%を占めるという報告がある.
症候から原因疾患へ
病態の考え方
動悸の病態生理は十分に明らかにされていない.動悸の感覚受容器は心筋や心膜の機械受容器や圧受容器であり,副交感神経や交感神経を介して視床や扁桃体,前頭葉の底部に伝達されると考えられている.患者が心臓の拍動を動悸として自覚する病態を図1図に示す.
動悸の病態は,①心拍数に対する不快感,②心拍の乱れに対する不快感,③心拍出に対する不快感に分けられる.疾患によってはこれらの病態が重複することで動悸が生じることがある.正常な心拍は洞結節における規則的な脱分極により生じ,心拍数は自律神経により調整されている.心拍出は前負荷,後負荷,心収縮力により規定され,心収縮力は自律神経により調整される.種々の病態によりこの正常な心拍が乱れることで動悸が生じる.
動悸の原因疾患として主なものを表1図に示す.
心拍数に対する不快感を動悸と自覚する場合
心原性の多くは不整脈が関与している.不整脈疾患では,心房筋および心室筋での異常な電気的活動により