静脈怒張とは
定義
静脈怒張とは,心臓の機能不全や末梢静脈の狭窄または閉塞により静脈還流異常が起こり,静脈圧の上昇により静脈が拡張,うっ滞した状態である.妊娠中など生理的な場合もあるが,多くは右心不全や静脈血栓症,静脈炎などによる病的な静脈還流異常によるものである.
患者の訴え方
患者の訴え方は,静脈怒張の原因によって多様である.静脈怒張の原因として多い右心不全の場合,体静脈のうっ滞により静脈うっ血をきたし,頸静脈怒張,肝腫大,下肢浮腫などが起こる.特に下肢浮腫は静水圧の関係で,はじめは足背から下腿に強く出ることが多く,患者は「足がむくむ」と訴えることが多い.下肢浮腫に関しては夜間臥位で睡眠し,日中は立位,座位で生活するため,患者は夕方に下肢浮腫が強くなると訴えることもあり,症状の日内変動も特徴的である.しかし,心不全患者は座位や臥位で休んでいることが多くなり,皮下浮腫ははじめ,殿部や背部仙骨部を中心にみられるが,さらに進行すると上肢や顔面にまで及ぶことがある.また,静脈うっ血により肝腫大や腸管浮腫が起こると,患者は「お腹が張る」「食欲がない」などのような消化器系の症状を訴えることも少なくない.さらに右心不全による静脈うっ血が進行すると,胸水や腹水の貯留も認めるようになり,呼吸困難や腹部膨満感を訴えるようになる.加えて左心不全症状も併発すると,肺うっ血などにより患者は「息切れ」を訴えるようになる.そして肺うっ血の患者は「夜は横になると苦しいので,体を起こして寝ている」といったように,臥位による静脈還流の増大が原因の肺うっ血の増悪に対し,座位による軽減として起座呼吸を訴えることも心不全による症状として特徴的である.
腎臓由来の静脈怒張の原因となる腎疾患を発症すると,たとえば急性腎不全では,循環血漿量の増加により,全身性の浮腫を訴えることがあり,腎不全の随伴症状として,食欲低下,全