ばち状指とは
定義
示指で,末節骨部分の厚みが遠位指節間関節部の厚さよりも大きい場合と定義される.健常者では爪と爪甲基部がつくる爪郭角が160°以内であるが,ばち状指では爪甲基部が盛り上がるために爪郭角が拡大し,あたかも指趾が太鼓ばちのような状態になっている〔図1図,診察の進め方「部位別の身体診察 四肢」図2図参照〕.
患者の訴え方
「爪の形が変わってきた」「爪が反ってきた」などと患者が訴えることもあるが,身体診察で初めて見つかることも多い.変形以外の症状や徴候は乏しいが,肥大性骨関節症(hypertrophic osteoarthropathy;ばち状指,関節炎,X線で骨膜下骨増殖像を3徴とする)では,指の局所に疼痛を訴える.
患者がばち状指を訴える頻度
先天性にばち状指がみられる強皮骨膜症〔pachydermoperiostosisまたはTouraine-Solente-Golé(トゥレーヌ・ソレント・ゴレ)症候群〕は稀な疾患で,常染色体優性遺伝を示し,男性に多い.
後天性疾患でのばち状指の頻度は定かでないが,動静脈シャントの程度と期間が増すにつれ,ばち状指が起きてくる.肺癌では1〜10%の頻度でばち状指がみられる.
症候から原因疾患へ
病態の考え方
ばち状指では,指頭部で血管が増生し,血流が増大して結合組織が増殖している.これらをきたす病態と疾患を図2図,表1図に示す.
ばち状指が起きるメカニズムは必ずしも明確ではないが,血小板由来成長因子(platelet derived growth factor; PDGF)や血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor; VEGF)などの体液性増殖因子が動静脈シャントによって不活性化が抑制され,結合組織の過形成を起こすためと想定されている.チアノーゼ性心血管形成異常,低換気部分で肺内シャント