腹部膨隆とは
定義
腹部膨隆とは腹部が張り,臍部が胸骨剣状突起と恥骨結合線を結んだ線より突出している場合をいう.また自覚的な膨満感,緊満感を訴える場合もこれに含む.
腹部への気体貯留(鼓腸)あるいは液体貯留(腹水)によって起こることが多いが,腹腔内・後腹膜臓器の腫瘤や妊娠子宮などによっても,また腹壁への脂肪貯留によってもみられることがある.
腹腔内・後腹膜臓器の腫瘤では,局在性の膨隆を認めることが多いが,ときに腹部全体が膨隆することもある.
患者の訴え方
一般に自覚症状として,「腹が張る」「腹が苦しい」などの腹部膨満感や緊張感を訴えることが多い.腸内ガスが原因の場合は,げっぷ,放屁,腹痛など他の症状もみられる.腹水が原因の場合は,かなり高度になるまで患者自身が気づかないこともある.
腹腔内・後腹膜臓器の腫瘤などによる局所性の膨隆では膨隆の自覚を訴えて来院する患者も多い.
膨隆がみられない膨満感を訴える場合は,管腔臓器の一過性の機能異常に起因し,特に精神的因子の関与が大きいことが多い.
患者が腹部膨隆を訴える頻度
正確な頻度は不明である.腹部膨隆という症候には,ごく簡単なものからきわめて複雑なものまで,かなり多くの広範囲にわたる病態が含まれるため,頻度は比較的高いと考えられる.
症候から原因疾患へ
病態の考え方
(図1)図
腹部膨隆の病因は表1図のように分類される.腹部膨隆の主因である鼓腸と腹水の原因疾患については表2図,表3図に示す.
腹腔内・後腹膜臓器の腫瘤は通常,臓器本来の部位を占拠する局在性腫瘤である.巨大な卵巣囊胞,妊娠子宮の羊水過多,水腎症ではびまん性に腹部全体の膨隆となることもある.また,悪性腫瘍や肝硬変合併の肝癌などでは腹水貯留をきたすので,同様に腹部全体の膨隆となる.腹腔内・後腹膜臓器の腫瘤の臓器別占拠部位を図2図に示す.
診断の進め方
診断の進め方のポイント
●緊急処置を必