肝腫大とは
定義
肝臓は重量約1,300g(体重の約1/50)で人体中最も大きな臓器である.健常者では肋骨に覆われて触れにくいが,約20%の人では右肋骨弓下に触れることがある.したがって,右肋骨弓下に肝が触れるからといって肝腫大があるとはいえない.一般的には,指の幅2本分(2横指)を右肋骨弓下に触れれば,肝腫大があるといえる.しかし,1横指でも肝に圧痛があり,硬さが増していれば,肝腫大ありといえる.
患者の訴え方
自ら肝腫大を主訴に来院する場合は稀である.かなり著明な腫大,たとえば肝腫瘍,種々の物質の沈着症の場合に,「右季肋部の張った感じ」「重苦しい」という訴えが多い.また,肝(あるいは肝腫瘤)そのものをしこりとして訴える.多くは,他の症状(上腹部痛,黄疸,全身倦怠感など)で受診した場合に指摘される.
患者が肝腫大を訴える頻度
肝疾患の患者では,その病気の経過中に,いずれかの時点で肝腫大をきたす.肝が萎縮して全く触知できない劇症肝炎でさえ,病初期では肝腫大がある.
心不全,特に右心不全ではうっ血のため100%に肝腫大がみられる.
症候から原因疾患へ
病態の考え方
(図1)図
肝腫大は,なんらかの原因で肝がびまん性,ないし局所的に大きくなることである.
びまん性肝腫大の原因としては,うっ血,種々の物質の沈着,造血器腫瘍細胞の浸潤,種々の原因による炎症(病態として急性肝炎,慢性肝炎,肝硬変がある),胆汁うっ滞である.肝腫瘤でも多発性のものは,肝全体に大きく触れる.
局所性肝腫大は肝腫瘍でみられる.
肝腫大を引き起こす疾患として主なものを表1図に示す.
病態・原因疾患の割合
(図2)図
一過性肝腫脹は,原因が一過性のものである.高頻度(80%以上)にみられるものとして,急性心不全,急性ウイルス感染症,薬物性肝障害がある.
持続的肝腫大で高頻度(80%以上)のものは脂肪肝,慢性肝炎,肝硬変であり,