下痢とは
定義
下痢の語源は,ギリシャ語のdia(through)とrhein(to flow)にあり,流通を意味する.すなわち,水分含量の多い液状の糞便を頻回に排出する状態が下痢である.
健常者の糞便中の水分量は1日約100〜120mLで,1日の便重量が200gを超えることは稀である.個人間,個人内で大きな変動があるため,下痢の定義は,便の湿重量が1日250g以上とする場合が多い.
臨床的には,一般に①便通回数の明らかな増加,②便の液状化,③1日の便重量が平均250gを超えるときを下痢と考える.
下痢は急性下痢と慢性下痢に分類される.急性下痢は急激に発症し,しばしば腹痛を伴って1日4回以上排便をみる状態をいう.持続期間は1〜2週間以内である.
慢性下痢は,小児や成人では 3週間以上,乳児では4週間以上,下痢症状の持続した場合と定義される.
患者の訴え方
患者は症状の程度により,「しぶり腹」「水みたいな」から「軟便」まで,さまざまに訴える.同時に腹部膨満感,臍周囲の腹痛,放屁の増加などもみられる.
感染性では「発熱」,腸液の喪失による「のどの渇き」「体がだるい」といった訴えもある.
患者が下痢を訴える頻度
下痢は腹痛とともに最も多く遭遇する消化器症状の1つで,主訴として来院する患者は非常に多い.
症候から原因疾患へ
病態の考え方
(図1)図
通常,健康成人では,1日あたり,約2Lの水分摂取量に加え,約7Lに及ぶ唾液,胃液,膵液および胆汁などの消化液が小腸に流入する.小腸では水分の70〜80%が吸収され,回腸末端で泥状となり,残りの水分20〜30%(1.5〜2L)は結腸で吸収される.糞便中には約1%,100mLの水分が排出されるにすぎない(図2)図.結腸に最大吸収能力(1日5〜6L)を超す水分が流入したり,または大腸粘膜の傷害や運動異常によって下痢をきたす.
腸管運動は自律神経の支配を受
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