肛門・会陰部痛とは
定義
肛門痛は,肛門に生じる疼痛である.肛門(肛門管)は消化管末端を閉鎖する器官であり,排便や排ガスをコントロールしている.肛門縁から歯状線までを解剖学的肛門管,恥骨直腸筋付着部上縁までを外科的肛門管と定義している.肛門痛は原因疾患の有無により,器質性肛門痛と機能性肛門痛に分けられる.
一方,会陰部痛は,会陰部に生じる疼痛である.会陰部の解剖学的定義は,狭義には外陰部(男性では陰茎根,女性では腟前庭)と肛門の間の部位で,広義には骨盤出口全体を示す.本項では狭義の会陰部における疼痛を会陰部痛とする.
肛門と会陰部は隣接しているため,肛門痛と会陰部痛は明確に区別できないこともある.
患者の訴え方
「ズキズキ痛む」「チクチク,ヒリヒリ痛む」「重く痛む感じがする」など訴え方は多彩である.排便との関連性,痛みの種類,持続時間に留意する必要がある.たとえば,排便時や排便後に「ズキズキ痛む」のであれば裂肛などの肛門管の病変が疑われる.常に「ズキズキ痛む」もので,座位で悪化するのであれば肛門周囲膿瘍が疑われる.拭くときに「チクチク,ヒリヒリ痛む」のであれば帯状疱疹などの皮膚病変が疑われる.
また持続時間も多彩である.機能性肛門痛では,疼痛が急に生じ数秒から数分で消失する一過性直腸肛門痛,慢性的に反復し1回の疼痛が30分以上も継続する慢性直腸肛門痛がある.
患者が肛門・会陰部痛を訴える頻度
外来診療において,肛門・会陰部に生じる疾患で疼痛を生じるものは少なくはない.しかし,その正確な頻度は不明である.肛門・会陰部痛は,消化管や皮膚疾患のほか,泌尿器科疾患や産婦人科疾患,整形外科疾患が原因となることもある.
症候から原因疾患へ
病態の考え方
肛門・会陰部の感覚は第2・3・4仙骨神経より枝を出し合流した陰部神経により支配されており,よって,肛門・会陰部の疾患や,陰部神経の障害によって疼