背部痛とは
定義
背部痛とは,背中に痛みを訴える状態を指す.ただし,ここでいう背中とは頸部背面から腰部付近までを指す.
患者の訴え方
患者は,「肩が痛い」「首が痛い」「背中が張っている」などと訴える.局所が痛いのか,痛みが放散するのか,鈍痛なのか,激痛なのかを把握する必要がある.
患者が背部痛を訴える頻度
整形外科外来患者のなかでは,背部痛を訴える患者は10〜20%程度であり,傍脊柱筋の筋肉痛も含め,脊椎疾患が最も多い印象がある.また,肩甲骨周囲の背部痛は頸椎疾患のことが多い.
症候から原因疾患へ
病態の考え方
(図1)図
患者が背部痛を訴える場合,まずそれが脊椎(傍脊柱筋を含む)から生じているものなのか,または胸部(肺,心臓など)や腹部内臓に原因のある疾患であるのかを考える.胸部や腹部内臓に原因のある疾患ならば,呼吸器系疾患,心血管疾患,消化器系疾患を中心に精査していく.脊椎に原因のある場合は,外傷,変性疾患などの脊椎そのものの精査を行う.
背部痛を引き起こす原因疾患として主なものを表1図に示す.
病態・原因疾患の割合
(図2)図
脊椎疾患が多く,特に,傍脊柱筋由来の筋肉痛が臨床的重要度は小さいが,頻度は最も多いと考えられる.最近,転移性脊椎腫瘍が増加しているので,これも念頭におく必要がある.病態,原因疾患の頻度とその臨床的重要度を図2図に示す.
診断の進め方
診断の進め方のポイント
背部痛の原因には,呼吸器系疾患,心血管疾患,消化器系疾患などの内科的領域のものや,脊椎の外傷,変性疾患などが考えられる.医療面接,身体診察などでこれらの鑑別を行う.また,脊椎の骨転移が初発症状として見つかる悪性腫瘍も存在する.
医療面接
背部痛は自覚症状であるだけに,医療面接が診断に重要な役割を果たす.経過や誘因などを中心に,病歴情報を丹念に聴取する(表2)図.これにより胸部および腹部症状なのか,脊椎由来の背部痛