腰痛とは
定義
腰痛とは,腰部に痛みを訴える状態を指す.ただし,ここでいう腰部とは背中から殿部付近までを指す.
患者の訴え方
患者は,「腰が痛い」「背中が重だるい」などと訴える.局所が痛いのか,痛みが放散するのか,鈍痛なのか,激痛なのかを把握する必要がある.
患者が腰痛を訴える頻度
整形外科外来患者のなかでは,腰痛を訴える患者は30〜40%程度であり,傍脊柱筋の筋肉痛も含め,脊椎疾患が最も多い印象をもつ.
腰痛の有病率は男女ともに約25%といわれ,70歳代の女性では40%を超えている.整形外科学会の調査によると,実際に来院する整形外科外来患者の愁訴は,上肢,下肢および脊椎・腰椎でみるとほぼ30%と同率であるが,さらに細部を調べると腰痛を愁訴に来院される患者が最も多く,18.8%を占めていた.次に膝関節の14%と続いている.
症候から原因疾患へ
病態の考え方
(図1)図
患者が腰痛を訴える場合,それが脊椎(傍脊柱筋を含む)から生じているものなのか,または腹部(消化管や後腹膜腔)に原因のある疾患であるのかをまず考える.腹部に原因のある疾患ならば,泌尿器系疾患,産婦人科系疾患,消化器系疾患を中心に精査していくことになり,脊椎に原因のある場合は,外傷,変性疾患などの脊椎そのものの精査につながっていく.
腰痛を引き起こす原因疾患として主なものを表1図に示す.
病態・原因疾患の割合
(図2)図
脊椎疾患が多く,特に,傍脊柱筋由来の筋肉痛が臨床的重要度は小さいが,頻度は最も多い.最近,転移性脊椎腫瘍が増加しているので,これも念頭におく必要がある.病態,原因疾患の頻度とその臨床的重要度を図2図に示す.
診断の進め方
診断の進め方のポイント
腰痛の原因には,泌尿器系疾患,産婦人科系疾患,消化器系疾患などの領域のものや,脊椎の外傷,変性疾患などが考えられる.最も頻度の多いのは,傍脊柱筋に由来する筋筋膜性の腰痛症で