乏尿・無尿とは
定義
乏尿
乏尿は,1日尿量が400mL以下をいう.
通常,健常者の尿量は500〜2,000mL/日であるが,主として経口的に摂取される水分の量により尿量は変化するため,乏尿の場合,乏尿になりうる原因の存在が考えられる状態や全身状態の変化などを考慮して,判断するべきである.
無尿
無尿は,1日尿量が100mL以下のときをいう.
患者の訴え方
患者は,「尿が少ない」「尿が減った」「排尿の回数が少ない」などと訴える.しかし,これらの訴えは乏尿や無尿の定義に該当しない場合が多く,水分摂取が減少した状態での生理的範囲内の場合がほとんどである.
むしろ,種々の原因でショック状態にある場合や意識障害がある場合に,家族などに「最後の排尿がいつであったか」を確認することが,乏尿・無尿の診断に有用である.
患者が乏尿・無尿を訴える頻度
Allgrenら〔1997〕の報告によると,504人の急性腎不全患者のうち乏尿性腎障害は120人であった(23.8%).またAltintepeら〔2004〕は,トルコにおける1996〜2002年の急性腎不全患者283人のうち,59.7%に乏尿を認めたと報告している.
症候から原因疾患へ
病態の考え方
(図1)図
一般に食事を摂取している状態では,1日に600mOsmの溶質を尿中に排泄する必要がある.尿の最大濃縮力は約1,200〜1,400mOsm/kgH2Oであることから,これらの溶質を排泄するには,最低400mLの尿が必要となる.
【例】尿の最大濃縮力が1,400mOsm/kgH2Oの場合,必要尿量は以下のように計算される.
600 ÷ 1,400 × 1,000 = 429(mL)
必要尿量:約400mL
1日400mL以下の乏尿状態が続くと,溶質の排泄が不十分となり,体内に溶質が蓄積した状態,高窒素血症(azotemia)となる(図2)図.尿量の病